『オックスフォード連続殺人』著ギジェルモ・マルティネス
本著作は、一見すると、ありふれた陰謀の渦巻く推理小説のように見えるが、最終的には予想だにしない結末として、見事なマジックが明かされる。物語の主人公である、若いアルゼンチン人の大学生は、オックスフォード大学に到着したほんの数日後に、宿泊していた未亡人の死体とともに、殺人者によるものと思われる、記号で書かれた果たし状を見つけた。
本作では、ヴィトゲンシュタインが提唱した言葉ゲーム、クルト・ゲーデルの不完全性定理、そして数学の古代派の3つが、舞台となるオックスフォード大学での生活と結び付けられている。
小説は、40もの言語に翻訳され、2003年には、アルゼンチンにおいて『Crímenes Imperceptibles』という題名で出版された。また2008年には、監督を務めたアレックス・デ・ラ・イグレシアによって、内容が映画用に脚色されてもいる。 著者であるギジェルモ・マルティネス(1962年にアルゼンチンのバイアブランカで誕生)は、作家兼数学者でもある。 彼は、デビュー作品である『Acerca de Roderer(ロデレールについて)』(1993)を刊行して以降、次作に『La mujer del maestro』(1998)、そしてエッセイである『Borges y la matemática(ボルヘスと数学)』(2003)に加えて、同年の2003年には、アルゼンチン・プラネタ賞を受賞した『オックスフォード連続殺人(アルゼンチン版では『Crímenes Imperceptibles』)を出版している。 彼の最後の著書である『 La muerte lenta de Lucina B. 』 (2007)・『Yo también tuve una novia bisexual』 (2011) ・『Los Crímenes De Alicia』 (2019)、の3つ全てにおいても、ナダル・プレミオ賞を獲得した。 また、彼はエッセイ集である『La fórmula de la inmortalidad(不死の公式)』 (2005)、『Gödel para todos(ゲーデル)』 (2009)、そして『La razón literaria』 (2016)も世に出している。
さらに特筆すべき事柄として、論文や短編小説、そして書評等を、日刊新聞である『ラ・ナシオン・ディアリオス』・『ラ・クラリン・ディアリオス』・『ラ・パヒナ12・ディアリオス』に定期的に寄稿し、そのうえ、コネックス・ディプロマ賞とガブリエル・ガルシア・マルケス賞をも受賞している。